※本記事は、運用型広告の支援を行う株式会社シンビが、自社の見解として作成しています。すでに成果が出ている検索広告の予算を増やす判断を、Google広告を中心に、2026年10月2日時点のGoogle広告ヘルプにもとづいて説明します。
この記事のポイント
結論:予算を増やしてよいかは、平均のCPAではなく「増やした分だけのCPA(限界CPA)」が、1件にかけてよい上限(許容CPA)に収まるかで決めます。
- 上限になる許容CPAを決める
- 増やす余地があるかを確かめる
- 段階的に上げ、限界CPAで評価する
- 増やし切ったら、回し先を限界CPAで比べる
なぜ平均CPAではなく「増やした分のCPA」で見るのか
CPAは、コンバージョン(以下CV)1件あたりの広告費です。増やした分のCPA(限界CPA)は、次の式で出します。
限界CPA =(増額後の広告費 − 増額前の広告費)÷(増額後のCV数 − 増額前のCV数)
平均CPAは、増額前からの効率のよい配信と、新しく買った配信をならした数字なので、増やした分の効率が悪くても薄まります。たとえば広告費を1.2倍にして平均CPAが10%上がっただけでも、増やした分のCPAは元の2.2倍です。増やした幅が小さいほど、平均CPAのわずかな上昇が大きな悪化を意味します。計算には予算の設定値ではなく、実際に使った広告費を使います。
手順1:上限になる許容CPAを決める
予算は、限界CPAが許容CPA(1件のCVにかけても赤字にならない上限)を超える手前まで増やせます。許容CPAは、最も単純には次の式です。
許容CPA = 成約1件あたりの粗利 × 成約率
たとえば架空のパーソナルジムで、入会1件の粗利が30万円、無料体験の申込(CV)から入会する割合が15%なら、許容CPAは4.5万円です。このジムで、予算を段階的に増やしたとします。
表の「前の段階から増やした分のCPA」は、1つ上の行との差です。たとえば150万円から200万円の段階なら、増えた広告費50万円 ÷ 増えたCV9件 = 約5.56万円です。
予算を段階的に増やしたときの平均CPAと限界CPA(架空の数字。許容CPAは4.5万円)
| 月の広告費 | CV数 | 平均CPA | 前の段階から増やした分のCPA | 粗利の見込み − 広告費 |
|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 50件 | 2.0万円 | ― | 125万円 |
| 120万円 | 58件 | 約2.07万円 | 2.5万円 | 141万円 |
| 150万円 | 66件 | 約2.27万円 | 3.75万円 | 147万円 |
| 200万円 | 75件 | 約2.67万円 | 約5.56万円 | 137.5万円 |
| 250万円 | 80件 | 3.125万円 | 10万円 | 110万円 |
200万円の段階で増やした分のCPAが許容CPAを超え、手元に残る額も減るので、このジムの止めどころは150万円です。一方、平均CPAは250万円でも3.125万円で、許容CPAの7割ほどです。平均CPAだけを見ていると、赤字の増額を2段階続けてしまいます。
関連記事:リスティング広告の代理店の選び方(手数料の差の考え方)
手順2:増やす余地があるかを確かめる
次に、「予算が足りずに表示できていない検索」がどれだけあるかを、2つの指標で確かめます。
- インプレッション シェア損失率(予算):予算不足で、広告が表示されなかった割合
- インプレッション シェア損失率(ランク):広告ランク(表示されるかと掲載順位を決める評価)の低さで、広告が表示されなかった割合
損失率の組み合わせと、次の一手
| 損失率(予算) | 損失率(ランク) | 次の一手 |
|---|---|---|
| 大きい | 小さい | 予算を増やす第一候補。段階的に増やす |
| 小さい | 大きい | 増やしても表示は増えにくい。入札や広告の品質を見直す |
| 大きい | 大きい | 予算と入札の両方が候補。片方ずつ変えて確かめる |
| 小さい | 小さい | 表示の機会はほぼ取れている。回し先を検討する |
「大きい」の基準は、Googleのヘルプでは確認できませんでした。キャンペーンが複数あるなら、「損失率(予算)が大きく、限界CPAが許容CPAより十分低い」ものから増やすのが合理的だと私たちは考えています。指名キーワード(社名での検索)は分けて見ます。
目標CPAの自動入札では、予算と目標値のどちらを動かすか
Google広告の「目標アクション単価」(一般に目標CPA)は、CVごとの単価は目標値を上下しても、全体では目標値と同等になるよう調整する入札戦略です。
入札戦略と予算の状態別に、主に動かすもの
| 入札戦略と状態 | 主に動かすもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 目標アクション単価/予算による制限あり | 予算。先に目標値を見直す | その目標値の水準でCVを買い足す |
| 目標アクション単価/予算による制限なし | 目標値 | 予算を上げても消化されるとは限らない |
| コンバージョン数の最大化(目標値なし) | 予算 | 予算に応じてCPAが動く。段階ごとに限界CPAを確かめる |
1行目は、2026年8月17日の入札の更新を踏まえています。予算による制限を受け、実績が目標値より良いキャンペーンは、何も変えなくても配信が目標値に近づくので、増やす前に今の目標値が「その単価で増えても構わない」水準かを見直してください。
目標値は、許容CPAより低く置く
目標値を許容CPAちょうどにすると、平均が許容CPAに近づくまで配信が広がり、最後の増加分を許容CPAより高く買うことになります。私たちの考えでは、目安は「限界CPAが許容CPAに届く手前の段階の平均CPA」で、このジムなら150万円の段階の約2.27万円(許容CPAの半分ほど)です。比率はアカウントごとに違うので、今の平均CPAに近い値から始め、段階ごとに少しずつ上げます。
関連記事:品質スコアの上げ方(広告の品質の見方)/指名キーワードの広告(指名と一般を分けて見る理由)/自動入札の学習期間(目標値を変える幅とタイミング)
手順3:段階的に上げ、限界CPAで評価する
1回の幅:差が読める幅にする
CVの件数は偶然でも上下するので、増やす幅が小さすぎると限界CPAが読めません。増えた件数が少なければ判断を保留します。止めどころを過ぎるのが心配なら、上げ幅は抑え、比べる期間を2〜3か月に延ばすほうが安全だと私たちは考えています。
待つ期間:増額後は2週間を目安に待ってから比べる
Googleは、目標値のある入札戦略で予算を増やした後は、しばらく待ってから評価するよう案内しています(予算の変更では「学習中」になりません)。私たちの目安は、どの入札戦略でも2週間です。件数が少ない案件や、CVの計上まで日数がかかる商材は長めに待ちます。
前後で日数と曜日の並びをそろえ、その間はほかの設定を変えずに比べます。予算と目標値は別の日に変えます。
月の途中で増やすときは、費用の上限に注意する
Google広告のほとんどのキャンペーンでは、ある日の費用が1日の平均予算の2倍まで使われることがあり、1か月の上限は1日の平均予算の30.4倍です。月の途中で変えると、その月の上限は「それまでに使った額 + 新しい1日の予算 × 残りの日数(変更日を含む)」です。60万円を使い、残り10日で1日4万円にすると、上限は100万円です。社内で月の上限を決めているなら、着地を確かめてから増やしてください。
関連記事:自動入札の学習期間/Google広告の曜日・時間帯の配信(曜日で配信を止めている場合の予算)
手順4:増やし切ったら、回し先を限界CPAで比べる
損失率が「予算」も「ランク」も小さいなら、今のキーワードと地域の表示はほぼ取れています。回し先は、次の段階で増やす分の限界CPAどうしを比べて決めます。
予算の回し先と、判断の基準
| 回し先 | 判断の基準 |
|---|---|
| キーワードの拡大 | 新しく広告が出た検索語句の費用 ÷ そのCV数が、許容CPAに収まるか |
| Yahoo!広告の検索広告 | Google広告と合わせた増分で限界CPAを計算し、Google広告を次の段階に増やした場合と比べる |
| LP(広告から最初に見るページ)の改善 | 1クリックに払える上限は「許容CPA × CVR(クリックがCVになる割合)」。CVRが上がれば、払えるクリック単価も上がる |
| 検索以外の広告 | 媒体の管理画面のCPAではなく、全体の増分で計算した限界CPAで見る |
このジムで、Google広告を150万円から200万円に増やした分のCPAは約5.56万円でした。代わりにYahoo!広告に30万円を使って9件増えたなら約3.33万円で許容CPAに収まるので、Yahoo!広告に回すほうが利益が残ります。
関連記事:Yahoo!広告の自動入札/Yahoo!広告とGoogle広告の違い/リスティング広告のCPA改善(打ち手を試す順番)/デマンド ジェネレーション キャンペーン(検索以外の広告の評価)
よくある質問
Google広告で、1日の予算の2倍を超えるとどうなりますか?
超えた分は請求されません。Googleのヘルプでは、費用が1日や1か月の上限をまれに超えても、超えた額は請求されないと説明されています。
Google広告の予算は、どこで変更しますか?
[キャンペーン]ページで、[予算]列の鉛筆アイコンを選び、新しい1日の平均予算を入れて保存します。月の予算なら、30.4で割った値が目安です。
まとめ:状況別に、次にやること
| いまの状況 | 次にやること |
|---|---|
| 増やすか迷っている | 許容CPAを計算し、損失率の「予算」と「ランク」を見る |
| 目標CPAの自動入札で、予算による制限を受けている | 先に、目標値が「その単価で増えても構わない」水準か見直す |
| 1回にどれだけ上げるか決めたい | 差が小さいうちは保留。上げ幅を抑えるなら、比べる期間を2〜3か月に |
| 増やしたらCPAが上がった | 件数がたまってから限界CPAを計算し、許容CPAを超えた段階の手前まで戻す |
| 損失率が「予算」も「ランク」も小さい | 回し先を、次の段階の限界CPAで比べる |
補足と出典
- パーソナルジムの表、Yahoo!広告の例、費用の上限の例は架空の数字で、代理店の手数料は含めていません。手数料が広告費に比例するなら、増やした分の費用に足してください
- 継続課金なら、入会1件の粗利を何か月分で見るかを社内で決めてから計算します
- 1.2倍・10%の例は「(広告費の倍率 − 1)÷(広告費の倍率 ÷ 平均CPAの倍率 − 1)」で計算しています
- 目標値の置き方、「主に動かすもの」の整理、待つ期間の考え方は、私たちの考えです
- 2026年8月17日の更新は、8月27日に全アカウントで展開が完了しました
- この考え方はYahoo!広告でも同じです。Yahoo!広告 検索広告は、2026年4月1日から「LINEヤフー広告 検索広告」です(LINEヤフー for Business の告知)
- 出典(いずれもGoogle 広告 ヘルプ):インプレッション シェアのデータを取得する、「目標アクション単価」入札戦略について、目標値に基づく入札戦略への変更、目標値ベースの入札戦略への変更に関するよくある質問、費用の上限について、予算の変更が反映される仕組み、キャンペーンの 1 日の平均予算を設定、変更する
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